今回は、木の家ネットのメンバーと共同の話題提供ということで、「土壁」をテーマに書きます
土壁のことは、何度もブログで書いてきましたので、重複となることもあるかもしれませんが、
今回は、技術的なことも含めて書きたいと思います
①そもそも土壁が作られてきた理由
日本の東北から沖縄まで、住宅や蔵には、土壁が使用されてきました。
また、世界を見ても様々な国で使用されております
土壁を塗るための下地は、木(割った板状のもの)、竹、粗朶(木の枝)、葦、などを組んだものです
それらは、身近にあった自然素材です。
土は、最も身近な大地そのものです。
土の種類は様々ですから、そのなかで、塗りやすく強度のあるものに、経験が積み重なって、藁や草などをいれて
「壁土」を作ってきましたので、地方により、いろいろな多様性があります。
宮古島でも土壁の家はできました
今の宮古島の家は、ほとんどコンクリートの家ばかりです
庭の土に牧草を混ぜて作った荒壁土(宮古島はすべて赤土)
②建築基準法の土壁が正しいのか?
その地方にあった独自の基準でないと一律にこの狭い日本で決めても、どこかの基準になってしまって
それを法律で縛ろうとすればするほど、経験の無い法律を監視する立場の方々は、数字にしばられてしまう結果になり
文化が消えていってしまいます。各地で土壁の実験が行われていますが、ほとんどが土壁の構造的な視点での実験です。
土壁は、構造のためだけに存在するのではないはずなのに、地震の度にその話題に引き込まれます。
思った以上に構造に対しての評価は高いので、安心ですけど、もっと、違う角度から評価する方法を示す必要があります。
③蓄熱と断熱、遮熱、防火について
土壁は、断熱材という視点から見ると、
断熱材とはいえないくらいの数字(熱伝導率ー土壁0.6W/m.k グラスウール0.05W/m.k)です。
グラスウールの約1/10以下しかありません。
じゃあ、感覚的にどうでしょうか?
グラスウール10CMと土壁140CMが同じ断熱効果だと思えますか?
感覚的におかしいですよね
そんな洞窟みたいな壁の家は存在しませんよね
それは、土壁の持つ蓄熱性が、グラスウールなどとくらべて約数十倍もあるからです
御施主さんのなかで、こう言われた方がありました
「夏に友達の家へ行くとムッとするけど、自分の家に入るとホットする」
夏は、風通しをよくしてやり、壁の温度をさげると本当に涼しいんです
冬は、暖房の熱を蓄えてくれます
時々しか使わないような別荘みたいなところは、冬だと冷え切ってしまって
なかなか暖まりません
毎日住む住宅であれば、熱を蓄えてくれます
その熱は、水蒸気の出し入れでも行われます
蒸し暑い時には、水分を吸い、乾燥したときには、水分を空気中に供給してくれます
ですから、断熱材という一面からだけの評価では、熱のことは語れないのです
建築基準法に「真壁同等」という表現があります
これは、22条地域などで、延焼ラインの中にある住宅の外壁は、土壁と同じ防火性能を有しなければならないということで
板金などで仕上げる場合は、土壁が無いと下地に石膏板を張らなければなりません
そういう意味では、土壁が建築基準法の基準になっているわけですが、昨今では、土壁をする工務店は数えるほどとなってしまいました
初めての竹小舞組を習う地元の建築職人さん
左官も大工もなんでもこなす島の人
④仕上げ方法について
私の設計する建物は、基本的に竹小舞い;藁縄しばりです。
荒壁土は、愛知県産の粘性土。泥コン屋さんで買います。
竹の編んだ格子の両面に荒壁土をつけ、外側にも中塗をして厚みを増します
内側の仕上げは、下塗り、中塗、仕上げです
中塗の土でおしまいのことも多々あります
漆喰仕上げは、最近では、仕上げの下塗り、中塗、仕上げと3工程
荒壁からだと同じところを6~7回塗ることとなり
ビニルクロスを張る手間とは比較になりません
当然費用もかかりますが、その分、長く使えて、メンテナンスはいらず色変わりもありません
⑤その他
遮音効果や見た目の美しさがあります
表面の仕上げは、漆喰に限らず、さまざまな表情もつくれますし、色もあります。
それなりの費用はかかりますが、費用のかかる分だけの価値はあるかと思います。昨今では、化学接着剤の入った壁仕上げ剤が安くありますが、やはり自然素材だけのもののほうが、色あせもなく長持ちすると思います。
伝統の技術にはそれなりの技が
隠されているのです
大切に土壁を継承していきたいものです
親子で体験しながら、自分の家の壁を塗る(北名古屋市 T様)
お子様にとっては、一生の思い出となります